MERRY COUPLE(4)

と、ドアを出、曲がろうとしたその時、《チチ》は何かにぶつかった。
こけはしないものの、2・3歩後ろにたじろぐ。

「!てて・・・・・・・・・・・」

「?大丈夫かチチ?・・・・・・・・・・・あ!!」

「?・・・・・あ・・・・・悟飯ちゃん!!」

そう、そこには悟飯がいた。
しかし、《チチ》があれだけの大声を上げたのだ。不思議なことではない。

「あ・・・・・す・・・・スミマセン・・!!お父さんの叫び声が聞こえたので、駆けつけたんですが・・・・・・
 なんだか中に入ってはいけないような気がして・・・・・・・・・」

申し訳なさそうに頭の後ろに手を当てながら、悟飯が謝る。

「そ・・・・そうけ。・・・じゃあ悟飯ちゃん今の全部聞いてただか?」

「は・・・・・はい。・・・・途中からですけど・・・・・・。」

悟空の姿をした《チチ》が、その訛りのままで喋るので、少し戸惑い気味の悟飯。

「なんだか・・・・大変な事になってしまいましたね・・・・・・・」

「まったくだべ・・・・・」

頭に手を当て、《チチ》は深くため息をつく。

「なあ、悟飯ちゃん。悟飯ちゃんがオラ達を寝室に運んでくれた後は何もなかっただか?」

「ずっと見てたわけではないので断言はできませんが・・・・・・・特別大きな音もしませんでしたし・・・」

「そうけ・・・・・・やっぱり屋根から落ちたときかな?アヤシイのは・・・・・」

「じゃあ、もう一度屋根からおちればいいのか?」

「今の所はそれしかないべ。」

「そっか―――・・・悟飯!もしまたオラ達が気を失っちまったらよろしくな!」

「あ・・・・はい!」

そして三人は、玄関へと足を向かわせた。

 

 

「よし!悟空さ!!昨夜と同じ格好のままで落ちるだよ?」

「?オラが昨日のチチの位置にくればいいのか?」

「そうだべ!で、受身は取ったらだめだべ?」

《チチ》と《悟空》は屋根に昇り、落下の打ち合わせをしている。
そして下には二人を心配そうに見守る悟飯。

「大丈夫ですか?お父さん、お母さん・・・・・・」

「大丈夫だべ!悟飯ちゃんのためにも、早く戻らないとな!」

「・・・・・・・・は・・・はい・・・・」

頭では分かっているものの、まるで父が自分のことを”悟飯ちゃん”と呼んでいるみたいで
変な感覚がしてしまう。

「・・・・・それじゃあ行くべ・・!悟空さ!」

「お・・・・おし・・・・・!」

『1・・・2・・・3!!』

悟飯が固唾を飲んで見守る中、掛け声を合わせ、屋根の端から《悟空》と《チチ》が飛び降りる。

    ドスッ!!!

孫家は一階建てなので、二人が落ちるのには1秒もかからなかった。

「お父さん!お母さん!!大丈夫ですか!?」

二人の傍に悟飯が駆け寄る。
すると、二人がムクリと起きだした。

「い・・・いてててて・・・・・・・・・・・」

「あたたた・・・・・・・・・・・・」

「!戻りましたか!?」

悟飯の問いに、二人は一度顔を見合わせ、そして首を横にふる。

「そうですか・・・・・・・」

「なあに!!なにも一回で成功するとは思っちゃいねえよ!
 もう一回やってみるさ!」

「・・・・・そうだべな。もう一回落ちてみるべか・・・・・」

明るく振舞う《悟空》と、ちょっと項垂れ気味の《チチ》。
そして二人は再度屋根へと上った。

しかし何度落ちても、どんな格好で落ちても、二人が元に戻る事はなかった。

 

体を土まみれにして、屋根を見つめながら呆然とする二人。
すると《チチ》の目から涙が零れ落ちた。

「うわあぁぁぁぁぁ!!」

地べたに座り込み、泣き喚く《チチ》。
《悟空》もその横で頭を抱えて座りこむ。

「どうしたらいいんだべ!?どうしてこんなことになっちまったんだべ!」

「オ・・・オラだってどうしてこんな事になったかわかんねぇよ・・・・」

「お父さん・・・・お母さん・・・・・・」

悟飯も、どうしていいか分からず、ただおろおろと、二人を見ているばかりだった。

(ど・・・・どうしよう・・・・・・・・)

と、そう思ったときだった。

     ぐぎゅ〜〜〜〜〜るるるるる・・・・・・・・

誰かのお腹の音がなり、緊迫した空気が、一気に崩れ落ちる。

「お・・・・・・・・・お父さん・・・・・?」

悟飯が少し呆れた眼差しで、《悟空》を見る。

「え!?お・・・・・・オラじゃねぇよ!!!」

悟飯の視線に気付き、手を横にふり、否定する。

「え?じゃ・・・・じゃあ今の音は・・・・・・・・・?」

ゆっくりと首を《チチ》の方へと傾ける。
すると《チチ》は蹲っていた体を起こし、ばつが悪そうに二人を見る。

「すまねえだ・・・・・・今の・・・・・オラだベ・・・・」

「ハハ!でっけえ腹の音だなチチ!!!!」

「な・・・・なに言ってんだべ!!元はといえばこの体は悟空さの体なんだから悟空さの腹が鳴ったってことだべ!!」

「ああ、そういやそうだ!」

「・・・・・・そういえばオラ達、この騒動のおかげで朝御飯食べてなかっただな。」

「あ・・・・・そういえば・・・・・」

「オラ、いつもより腹へってなかったから全然気がつかなかったぞ!」

「・・・・しょうがねえ、これから作るベ!」

そう言って、《チチ》は台所へと向かい、いつも通りに花柄のエプロンをつけ食事の支度をはじめた。

・・・・・・《悟空》と悟飯がその姿を見て、複雑な気分になったことは言うまでもない・・・・・・。

 

 

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