うずらの卵  (6)

 

 

「あ〜あ〜、ビーデルのお姉ちゃん行っちゃった…」

「ねっ!トランクスくん!夕ご飯できるまで兄ちゃんと遊んでようよぉ!!」

「そうだなっ!」

悟天もトランクスもにやりと顔を合わせた。
普段お世話になっている人の世話を焼けるのがよっぽど嬉しいのだろう。

そして悟天はチチに許可をえるためか、台所に向かって声をかけた。

「ねえ、お母さん!……あっ!!」

途中で気づき、慌てて口をふさぐ悟天。

「(ば、バカ!悟天!!これでばれたらどうするんだよ!?)」

隣のトランクスも焦りを隠せない。
声に出せたら、今すぐ悟天を怒鳴っているだろう。

「…お母さん?」

運悪く、先ほどの悟天の声はチチにしっかりと届いてしまったようだ。

「な、なははははっは!!あ、あの今のは『お姉さん』ッて言ったんだよなあ!?
 僕にはそう聞こえたけど〜!」

焦りのためか、つい『僕』口調で話すトランクス。
またこれが、フォローになっているのかは別である。

「そ、そうなんです〜。僕『お姉さん』って言いましたぁ〜!」

さすがにこの時だけは焦る悟天。
ビーデルはというと、チチの横で明らかに『バカ』という口パクを繰り返していた。

「も、もしかして!!」

チチが額に汗を流し悟天に迫る。


や、やばい!!!


このとき誰もがそう思った。

「ごてこちゃん……もしかしておめえ…」

こうなったらもはや誰も止める事は出来ない。
3人は天にすがる想いでチチにばれていないようにと願った。

「…ビーデルさんの子供け?」

「………」

(よ、よかった〜どうにかばれてないみたい…
 って〜ちょっと待って!悟天君が私の子供って…私ってそんなおばさんに見えるの!?)

安心した反面、ショックを隠せないビーデル。

(ど、どうにかばれないで済んだ…それにしても悟天のヤツは危なっかしいなあ)

額の汗をぬぐいながらトランクスは思った。

(よかった♪さっきトランクスくんが言ってたけど、僕が悟天てことばれたらいけないんだよね。危ない危ない。。)

立ち直るのが早いものでもう笑みをこぼす悟天。のん気なものだ。

「違うけ?……」

しばらく返事がないのを心配し、今度はビーデルのほうに顔を向けて言葉を発したチチ。

「ち、違いますよっ!!!全然違います!!」

我に返り首をぶんぶん振って否定するビーデル。

「んだべな。こ〜んな若え娘っこにこ〜んなでけえ子供がいるはずないだな。」

「アハ・・はははは…」

なんとも複雑だ。
悟天はあなたの息子だってば、チチ!

そして再び夕食の準備をし始めたビーデルとチチだった。


「(全く!お前は危なっかしいな!!)」

「(ご、ごめんトランクスくん…)」

「(いいか、今度はオレが言うからな!)」

「(うん、トランクスくん頑張って!!)」

ガッツポーズをとる悟天。
対してトランクスはいかにも『まかせろ!』という顔でニヤリとした。


「ねえ、おばさん!!」

今度はトランクスが大声で台所に向かって声をかけた。

「おばさん…?」

いち早く反応したのはやはりチチ。

「あのさ〜、夕食できるまで悟飯君と遊んでていいですか?」

そう言ったトランクスの前には体をフルフルと振るわせるチチがいた。

「お、おばさん?どうしたの??」

トランクスもチチの異変に気づき優しく声をかけた…


 が、


「オラは『おばさん』じゃねええええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

突然体を起こし、激怒してしまった。


し、しまったぁ〜!!


またやってしまった。


「一体オラを何歳だと思ってるんだああああ!?オラはまだ23だ!!!」

「!!!!」

チチの大声に体をビクッとさせるトランクス。
チチの物凄い剣幕に、謝るタイミングも見失う。
そんなチチの横ではビーデルが顔に手を当ててトランクスに呆れている。

(ど・・・どうしよう・・・・・・・)

思わず固唾を飲むトランクス。
しかしそんなトランクスを救ったのは意外にも悟空だった。

「オイオイチチ〜〜〜!相手は子供だぞ?そんなにマジに怒らなくてもいいだろう?
 それに子供から見れば子持ちの女は皆おばさんって呼んじゃうのも
 無理ないじゃねえか!だからオラもオジサンってことになるしな…」

そして悟空の珍しく冷静な言葉に、チチも平常心を取り戻す。

「そ・・・そうだべな。すまねえ・・・えっと・・・トランクス?・・・だっけか?怖がらせちまって…」

「い・・・いえ・・・こちらこそゴメンナサイ…悟飯さ・・・君のママ・・・。」

トランクスの頭にチチがポンと手を置き、トランクスの目の高さまで屈むと
少し申し訳なさそうにニコッと笑った。

「あ・・・あの・・・それで・・・悟飯君のママ。僕たち、悟飯君と一緒にちょっと外で
 遊びたいんですけど・・・・いいでしょうか??」

その言葉に、後ろでトランクスとチチのやり取りを聞いていた悟飯が顔を明るくする。
しかしチチは少し考えているポーズを取った。

「ん〜〜〜・・・・でもよぅ、もう日が落ちてくる時間だからなぁ・・・・・・。」

偶には年の近い子と遊ばせるのも悟飯の為かもしれない、
そう思うと直には答えることが出来なかった。
すると、悟空がそんな迷っているチチを見て、ポンと手を叩く。

「じゃあチチ!オラも一緒に出るってのはどうだ?それなら心配いらねえだろ。」

「そうけ!したら心配も少なくなるべな!いや〜!今日の悟空さはホント気が利くな!
 よし!じゃあ悟飯ちゃんも少し遊んで来い!でも帰ってきたらちゃんと勉強するんだべ?」

悟空を誉めながらも「心配ない」とは言わないチチ。
しかしそんなことには悟空は気付いていない。

「はい!お母さん!」

チチが悟飯の頭に軽く手を置くと、ニコニコしながら、悟飯は椅子からタンと降りる。
それを確認すると、悟天は悟飯の手を取り、
また、トランクスも悟飯の反対側の手を取った。

「じゃあ、悟飯君のママ、ちょっと遊んできます!」

そうトランクスが言うと、3人は手を繋いだまま、駆け足で表へと出て行った。

「お・・・おい!ちょっと待てってばよ!オラを置いてくなって!!」

既に小さくなった3人を見て、慌てて悟空は席を立ち、後を追った。

 

          
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