うずらの卵  (7)

 

「いんや〜…それにしてもビーデルさんいい手付きしてるなあ〜。。」

「…え…そうですか?」

「んだよ!なんつ〜か…力の入れ具合とか、テンポとかがイイ感じだっ!」

チチがビーデルの手元を見て絶賛した。
そう、4人が出かけていってからビーデルとチチは食事の支度もそろそろ終盤にかかり始め、
使ったフライパンやら鍋やらを洗っているときだった。

「誰かに教えてもらったりしたんだべか?」

「……」

「??」

「あっ、いえ!!とっ特にございません!」

焦っている所為か、語尾がやけに丁寧語になっている。
と言うのもその時、ビーデルの脳裏にはチチが皿洗いを教えてくれた記憶が蘇っていたのだった。

「あ〜あ、ビーデルさんみたいなし〜っかりした子が悟飯ちゃんの
 嫁に来てくれればいいんだがなぁ〜…」

チチが自慢の息子の為を想い、ため息混じりに呟く。

「…ええっ!?」

悟飯がまだ4歳だというのを忘れ、マジメに受け取ってしまうビーデル。

「…あっ、でもビーデルさんとはちょっと年の差がありすぎるか〜」

「……そ、そうですよね…」

お皿を洗う手から少し力が抜ける。
過去と分かっていながらもやはり気落ちしてしまうものだ。

「そうだべっ!ごてこちゃんなんてどうだべ!?」

「!!!??」

チチがポンと手をたたいて名案とでも言いたそうな顔をしている横に、
ぴくぴくと顔を歪ませるビーデルがいた。

「ごてこちゃんなら年齢的にもバッチリだっ!6.7歳だろ?ごてこちゃんてっ!」

勢いよく振り向き、ビーデルに訪ねた。
すっかりその気になってしまっている…

「…7歳ですけど…あの…でも…」

「んだ!3歳差なんて同い年のようなもんだからな!」

ビーデルが切り出そうとしても、なかなか隙を与えないチチ。
チチの口はまだも止まることなく、長々と話しつづけている。

「それに…ごてこちゃん、よ〜く見ると悟空さに似てねえけ??
 目の辺りとかそ〜〜っくりだべ!」

「あ〜…そうですかねぇ?」

分かっていながらもわざと否定する。


カシャ…

ビーデルが最後の調理器具を洗い終わり、軽く水を切って裏返しに置いたときだった。

「よし、夕飯の準備も大方おしめえだな!
 じゃっ、ビーデルさん、悪いけど悟空さ達呼んできてくれねえか??」

「あ、はい!わかりました。」

チチにそう言われると、借りていたエプロンをはずし、
ビーデルはすぐに回れ右をして、家から出て行った。



「あっれ〜?悟天君たちどこに行っちゃったんだろう?」

数年前だといっても大して地理は変わっていない。
悟飯の家の周りなら、少しは土地を知っているので、慌てず4人を捜す。
が、数分探しては見たものの、悟天たちの姿が全く見当たらない。

「…遠くに行っちゃったのかしら?」

とりあえずビーデルは家の周りからは離れ、少し離れた場所を探そうと思った。
ふわっと舞空術で浮き上がり、周りを見渡してみる。

「まったく〜!どこいっちゃったの〜?」

キョロキョロと顔を動かし必死に目を凝らすビーデル。

「………あれ?あれかな〜?」

ふと、ある一点でビーデルの視点が止まった。
かなり小さくしか見えるないが、山吹色とは意外に目立つものである。
そう、ビーデルは悟空の胴着が目にとまったのだった。

急いで悟天たちの元に飛んでいく。
どうやら向こうもビーデルの姿に気づいたらしく、
悟天やトランクスは手を振っている。

「ビーデルのおねえちゃ〜〜〜〜〜ん!」

悟天たちにつられ、チビ悟飯も両手でブンブンと手を振る。

ビーデルにはその光景がとても微笑ましく見え、おもわず笑みをこぼした。
それでもビーデルは気の強い女の子。
ちょっとキツめな口調で返事を返した。

「もう!探しちゃったわよ〜!あんまり遠くに行かない…………」

ビーデルの顔が急に硬直する。
そんなビーデルの様子を見、悟飯が不思議そうに尋ねた。

「どうしたんですか?お姉さん?」

「あ・・・・・・・あ・・・・・・・・」

震えながら、ビーデルの指はとある方向をさす。

「?あっち?」

その方向を悟飯がゆっくりと振り返る。

途端、悟飯の表情も固まった。

 

          
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