うずらの卵  (8)

 

 

「わ・・・・・うわ・・・・あ・・・・」
 
悟飯の声が震え、それと同時に地面が大きく揺れた。
 
「おお!?」
 
「なんだぁ!?」
 
「わあ!」
 
「きゃあ!」
 
其々声を上げ、ビーデルだけはその場にしりもちをついてしまった。
そして悟天、トランクス、悟空の三人も悟飯の視線の先へと顔を向ける。
そして先程の悟飯と同様、その表情が一瞬固まってしまった。
しかし、悟飯と違ったのは、三人の表情は見る見るうちに明るくなり、
目を輝かせていることだった。
 
「あ――――――!!恐竜さんだぁ――――――!」
 
「うお!でけえなぁ!食い甲斐がありそうだなぁ!」
 
そう、上を見上げ、木漏れ日の向こう重なり合った葉たちの合間からは、
かなりの大きさの恐竜の姿が窺えた。
しかも向こうもこちらに気付いているのだろうか、ゆっくりとではあるが
確実にこっちに近付いてきていることが、次第に大きくなる地面の振動から分かった。
しかし、その大きさに驚いているビーデルと、足が竦んでしまっている悟飯を他所に、
トランクスはどうであるかは分からないが、悟天、悟空は
既に頭の中で丸焼きとなった恐竜を想像し、悦に入ってしまっている。
 
そして自分と同じような顔(つまり、涎を少々垂らして恐竜を見ている顔)をしている
ごてこ(しつこいが悟天)の横顔を見ると、悟空が尋ねた。
 
「お?なんだ?ごてこ、お前もあいつ、食いたいんか?」
 
「うん!僕おなか空いちゃった!」
 
「ハハ。でもチチが夕飯作ってるから、程々にはしとけよ。」
 
「うん!」
 
嬉しそうに答える悟天。
     
      きゅるるるる〜〜・・・・
 
「?」
 
「?なんだ?オラの腹じゃねえぞ?」
 
突然の腹の虫の音に、キョロキョロと辺りを見回す。
そして悟空が一人一人の顔を見回していくと、悟天の後ろで
トランクスが気恥ずかしそうに、笑っていた。
 
「ぼ・・・・僕も恐竜、食べてみようかな〜・・・・?」
 
 
 
 
 
 
「ちょ・・・・ちょっとちょっとちょっと―――――!!」
 
「な、なんだ?」
 
巨大な恐竜を前にして、その悠長な3人の様子に堪り兼ね、ビーデルが大きな声を上げた。
 
「なにのんびりしているのよ!もうすぐそこまできちゃってるわよ!?大丈夫なの!?」
 
そんなビーデルに、悟空はキョトンとしたが、すぐに笑顔になって答えた。
 
「な〜に!大丈夫だって!あんな奴くらいすぐに倒せるって!」
 
「・・・・す・・・すぐにって言われても・・・・・・・」
 
 
      ズシン!
 
 
「きゃ・・・・!」
 
「わぁ・・・・・・!」
 
ビーデルの言葉がいい終わるのを待たずして、地面が今までになく大きく揺れた。
バランスを持ち直し、悟天たちの視線の先、ほぼ真上にビーデルが視線を渡らせると、
そこには大きな体と同様、大きく鋭い目をこちらに向けている恐竜がいた。
 
 
 
 
しばしの沈黙。鳥達が騒がしく飛び立った後は、
ビーデルの固唾を飲む音さえ聞こえてしまうほどに辺りは静まり返っている。
 
 
そして突然、ただ歩いているだけなのか、それとも攻撃なのか、
恐竜はその巨大な足で、トランクスたちのいる場所へと踏み出した。
 
「ほ!」
 
「ハッ!」
 
大地が大きく震える。しかしその一歩に踏み潰されることなく、
悟空とビーデルは右、悟天、トランクス、そしてなんとか悟飯も左へと避けた。
 
「おっと!あぶね〜な〜!」
 
「君々〜!いきなりの攻撃はダメだよ〜!」
 
「そうそう!オレ達じゃなかったら今のでペシャンコだぜ?
 お前はオレ達を食いに来たわけじゃないのか?」
 
三人とも余裕の笑み。
そんな様子を見て癇にさわったのだろうか、
恐竜は空気がビリビリする位強大な声を上げた。
 
「ひゃあ!おっどろいたぁ〜!ちょっとぉ〜!君、五月蝿いよ〜!」
 
「いや〜ん!こわ〜い!涙が出ちゃうよ〜!」
 
耳を抑えながらも、悟天トランクスは余裕綽々。
恐竜の額に血管が浮かび上がる。
 
「よし!じゃあオラが仕留めてくる!」
 
恐竜の声が収まると、そう言って悟空は舞空術で浮かび上がり、
あっという間に恐竜の目の高さにまで昇って行った。
 
「ああ――!おじさんずるい―――!オレも仕留めたい――!」
 
「僕も僕も〜〜〜〜〜〜!」
 
そしてまた二人とも悟空の後を追って舞空術で空へと昇って行った。
 
「おじさんって・・・・オラまだ23なんだけどなぁ・・・・・。
 って、おめぇ達も舞空術使えんのか!オラビックリしたぞ!」
 
「へへへ〜!オレ達も結構強いんだ!
 だからこの恐竜はオレ達が仕留めさせてもらうよ!」
 
悟空の元に向かいながらトランクスが答える。
 
 
 
 
「な・・・なんなのよも〜・・・・なんであんなに余裕なわけ〜?」
 
「・・・お・・お父さんも、お兄ちゃん達も頑張って下さい!」
 
後に残された悟飯とビーデルは、ただ上を見上げるしかできなかった。
     
 
今まで自分の足元でウロチョロと動いていたものが
自分の目の高さにまで上ってきて、恐竜は戸惑っていた。
しかもさらに自分の足元の方からまた二人、こちらへ向かっている。
ぐるるるる・・・・と小さく唸り、冷や汗を流してしまうのも仕方なかった。
 
 
「よ!どっち向いてんだ?」
 
下を向いて唸っている恐竜に向かって、悟空が話し掛ける。
そしての間に、悟天、トランクスの二人も悟空のいる高さにまであがってきた。
 
「ねぇ、おとう・・・じゃなくておじさん!僕たちがやってもいいでしょ?」
 
「え・・・・まあいいけどよぅ。大丈夫か?」
 
「大丈夫大丈夫!」
 
 
そう言うと、悟天とトランクスは恐竜の真正面へと進んだ。
 
「せ〜の!たあ!」
 
息を合わせてのダブルデコピン。
例えデコピンと言ってもトランクスと悟天のデコピンだ。
恐竜の周りには星が飛び、ぐらぐらと揺れながらピヨッってしまっている。
 
「おいおい!グラグラしちゃって大丈夫?ほら、お目目開いて!」
 
「はは!堅いね〜君のお肉!」
 
そして悟天とトランクスはすぐに仕留めるのは詰まらないとでも思ったのだろうか、
恐竜の瞼を引っ張ったり、頬肉を抓ったりと、遊び始めてしまった。
 
「お・・・おいおい・・・!あんまり遊んでないでそろそろ仕留めたらどうだ?」
 
「あ、うん。じゃあそろそろ仕留めようか悟・・・・ごてこ!」
 
「うん、そうしようトランクス君。」
 
 
そして、トランクスが恐竜の瞼を離した時だった。
 
「うぁ!?」
 
瞼が引っ張って元に戻るゴムのように眼球に当たった瞬間、
今までピヨッっていた恐竜が元に戻り、そしていきなり大きな声を上げたのだ。
 
「う・・・・うわ!大音響・・・・・!」
 
「う・・・・・うるさ〜い!」
 
「ほら!だから早く仕留めろって言ったじゃないか!」
 
そして恐竜はもう一度大きく叫ぶと、180度クルリと悟天たちに背中を見せて後ろを向き、逃げようとした。
 
「え・・・・あ!ちょっと・・・・!!」
 
慌てる三人。
そして下を向くと、真っ先に悟空が危険を察知し、
一気に下降していった。  

「!!危ない悟飯!!」
 
「ああ!!ビーデルのお姉ちゃん!」
 
 

 

          
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