うずらの卵  (9)

 

 

「え?」
 
上空から突然名前を呼ばれ、困惑するビーデル。
しかし次の瞬間、何が起こっているのかをすぐに把握した。
 
左前方からバキバキと、木々がスゴイ勢いで耐えれていく音が急速に近付いて来る。
逃げ帰ろうとした恐竜の尻尾がその反動でまわりの木々を薙ぎ倒しているのだ。
 
ビーデルも武道をやっているだけあって、その鋭い反射神経ですぐに上へ飛び上がろうとした。
が、飛び上がろうとした次の瞬間、ビーデルの視界に足が竦んでしまって動けなくなっている悟飯の姿が入ってきたのだ。
 
(しまった!いくら悟飯くんといってもここでの彼は4歳なんだわ!)
 
 
「悟飯――――!!」
 
 
上からは悟空の声。
しかしこのままでは間に合わないことはビーデルにも分かった。
 
そして考える間もなく、ビーデルの体は悟飯の元へと向かっていった。
 
(ええい!間に合え―――――・・・・・・・!)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「・・・・・・・・・・?」
 
恐る恐る、悟飯が目を開ける。
体に痛みはない。どうやら無事であるということを
しばらく間を置いてから認識した。
 
しかし足元が覚束無い。
違和感を感じ、足元を見てみる。
するとつま先の向こうには、先ほどの薙ぎ倒された木々が
小さくなって見えていた。
 
「わ・・・・わぁ!」
 
自分が浮いているということが分かり、驚く悟飯。
 
(で・・・でも僕は飛べないのにどうして・・・・・?)
 
そして次の瞬間、自分を抱いている柔らかい手の感触を感じ、慌てて上を見た。
 
 
 
「お・・・・おねえちゃん・・・・!」
 
「・・・よかった・・・・・。なんとか間に合ってたみたいね。」
 
上を向くと、息を早くしたビーデルが、悟飯を抱いた腕とは逆の腕で額の汗を拭っていた。
そして悟飯の視線に気が付くと、笑顔でVサインをした。
 
「へへへ・・・やったね!大丈夫?悟飯くん。」
 
「あ・・・は、はい!」
 
 
「お〜い!大丈夫か二人とも―――!!」
 
悟空が心配そうな顔つきで二人の下へとやって来る。
 
「あ、悟空さん!な・・なんとか大丈夫みたいです。」
 
悟飯を悟空に手渡しながら答えるビーデル。
 
「悟飯さ・・・じゃなくて悟飯くん、ビーデルさん大丈夫――――!?」
 
「悟飯くんにビーデルのお姉ちゃん、怪我な―い―――??」
 
悟空の後に続いてやってくる二人に「大丈夫」と合図を送り、
そして五人は再び地上へと降りていった。
 
 
「それにしても、なんだ、みんな舞空術できんのか―!ほんとオラ、今日はたまげっぱなしだぞ!」
 
そう言いながら悟空が一番先に着地する。
 
「ま・・・まあ色々と事情がありまして・・・・・はは・・・・・・」
 
そう答える顔にも、少し引きつってしまう三人である。
そしてそんな三人の顔を不思議そうに見ながら、悟空は抱っこしていた悟飯を
地面へと降ろした。
 
「・・・・・・?どうした?悟飯。」
 
降ろされてから、沈黙のままの悟飯。
不思議そうに悟空が下からその顔をのそき込む。
 
「ど・・・・どうしちゃったのかな・・・?にぃ・・・じゃなくて悟飯君・・・・」
 
「さ・・・・さあ・・・・・?」
 
 
 
 
「う・・ひ・・・ひっく・・・ひっく・・・うわ―――――――ん!!!!」
 
「!!???」
 
突然、大音量で悟飯が泣き出す。
その大きさといったらさっきの恐竜の声といい勝負だ。
 
「な・・・なんだなんだぁ!?」
 
「ど・・・・どうしちゃったのさ―――!?悟飯くん!」
 
耳を塞いでもなおその声は四人の脳味噌を揺さぶる。
 
「き・・・・きっとさっきまでの緊張がとけて、涙腺がゆるんじゃったんじゃないかしら!?」
 
そう言うと、ビーデルは悟飯を抱き上げ、そして背中をポンポンとたたきながら
悟飯を宥めた。
 
「だ・・・・大丈夫だから、もう恐竜も向こうに行ったから、もう大丈夫だから。
 だから泣き止もうね悟飯く―ん!」
 
「う・・・ひ・・・・ヒック・・・!っぐ・・・・っく・・・・」
 
そして徐々にではあるが、悟飯はその声を小さくしていきながら
涙を拭っていった。
 
「さ・・・・さすがビーデルさんだぜ・・・悟飯さんの扱いには慣れてるんだな。」
 
「う・・・うるさいよ!ソコ!」
 
トランクスの呟きに少し赤くなりながら、ツッコむビーデルであった。
 

 

          
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