written by Teanoさん


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Sein Und Zeit 〜存在と時間〜  第2話

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 「マーロン、先にパパの所へ行っておいで」


 コクリと頷き、身を翻して駆け出していった少女を見送り、18号はトランクスの方へ向き直った。
 トランクスの正面に座った18号は、彼に違和感をもたらした。
 今自分の目の前にいるのは、ついこの間までの敵だ。
 殺されかけた相手だった。
 彼にとっては仇以外の何者でもなかった。
 そんな相手と、こうやって向かい合って座っている。
 今の状況に、どう話を切り出していいのか分からずにいると、18号の方が先に口を開いた。


「話は、大体クリリンから聞いたよ。未来を変える為に来たんだって? ――"あたし"達を倒す為に」

「・・・ああ」

「正直言ってね、あんたが話した未来の話はかなりこたえたよ。自分の中の醜い部分
を引きずり出されて目の前に突き付けられた気分だった。・・・人間として生きる事
を放棄してしまったあたし達が確かに存在するんだと嫌でも思い知らされたよ」

 言葉の半分は独白めいていたが、トランクスには1つの単語が引っかかった。

「人間・・・?」

「あたしと17号は姉弟で、あたし達は元々普通の人間として暮らしてたんだ。――知らなかった?」

 トランクスの表情に、18号は答えが否である事を悟った。

 ――人間? あいつらが・・・元は俺達と同じ、人間?

「あたし達は望んでこの力を手に入れた訳じゃない。ドクター・ゲロは孫悟空を殺す為には手段を選ぶようなヤツじゃなかった――」

 信じ難い事実だった。
 トランクスの知る17号と18号には、人間――生命を持つ存在ならば誰もが当然持っているはずの感情というものが存在しなかった。
 眉一つ動かさずに親の目の前で子を手にかけ、子の目の前で親を手にかけ。
 そして。
 自分のあまりにも大切な存在を奪い去った彼ら。
 人間と言うには、彼らはあまりにも温かみを持ち合わせていなかった。
 トランクスは1度、彼らに問うた事があった。
 「何故、こんな事を」と。

『ドクター・ゲロは世界を征服する為に俺達を造ったらしいが、そんな事関係ない』

『人間を見ると腹が立つんだ。あたし達は人間が嫌いなんだよ』

 フッと笑みを浮かべ、彼らはそう答えた。
 あの時の2人の言葉。
 真意はすぐ側にあったのだ。

 "自分達には関係ない"
 "これは自分達が望んだ事じゃない"
 "何故人間である事をやめなければならない?"
 "何故お前達だけが、自分達の失ったものを持っていられる?"
 "人間でいたいのに"
 "望むのはそれだけなのに、自分達にはそれすらも赦されないと言うのか"

 トランクスはようやく、何故17号と18号があそこまで、それこそ不自然なくらい人間を憎んでいたのか理解できたような気がした。
 感情がなかったのではない。
 感情を殺して、彼らは生きてきたのだ。

「あたし達は必死に足掻いていたんだ。こんな力など要らない、普通の人間に戻りたい、ってね。
 だけどもう、何もかも遅すぎた。造り変えられたこの肉体はもはや元に戻る術を失っているんだ・・・」

「・・・だからと言って」

「『だからと言って、他人を殺す権利はお前達にはない』――そう言いたいんだろう?
 分かってる。だから・・・だからあたし達は、己の死を望んだ。孫悟空に、あたし達を殺して欲しかった。あたし達を解放してもらいたかった」

意外な言葉。
 ――否、正確には薄々感づいてはいたのだ。

『あいつらは、哀れな存在なんだ』

 ポツリと悟飯が呟いた事があったのを、トランクスは思い出していた。
 その言葉が示すものが何なのかよく分からなかった。
 憎むべき相手に哀れみを感じるなど、その時のトランクスにとっては理解のできない事だった。

 ――どうして、あの時の悟飯さんの言葉をもっとよく考えなかったんだろう。
悟飯さんは、何もかも知ってたんだ。知ってて、闘ってたんだ。倒す為じゃない、救う為に闘ってたんだ。

 意思に反して殺人マシンに造り変えられ、ただただ憎しみを募らせ、行き場を失っていた彼ら。
 憎しみの捌け口を捜し求めていた彼ら。
 この時代での17号と18号には、『解放』への一縷の望みがあった。
 運命という名の、憎しみという名の鎖を断ち切ってくれるであろう存在が。
 だが。
 だが、トランクスが生き抜いてきた時代ではどうだったか。

『貴方は闘っていない・・・。今から間もなく病気に侵されてしまうんです。・・・そして死んでしまわれる』

 そう言ったのは、トランクス自身ではなかったか。
 彼の時代では、17号と18号が動き出した時既に悟空は存在しない人間だった。

「今のあたし達はいい。結果的に"日常"を取り戻す事ができた。
 身体は戻れなくても、少なくても、以前感じていた行き場のないドロドロした感情からは解放された。
 けど――もう1人のあたしと弟はそうじゃない。孫悟空はそこでは存在していない。
 誰も"あたし"達を解放してくれない、誰も憎しみを受け止めてくれない」

「・・・・・・・・・」

「多分、あんたの知るあたし達は、あんたに助けを求めていたんだ。――悟飯じゃなくね」

 不意に出された師の名前に、一瞬トランクスの身体が強張った。


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