written by Teanoさん
----------------------------------------------------------------------------
Sein Und Zeit 〜存在と時間〜 第3話
----------------------------------------------------------------------------
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「あたしが悟飯と話したのは数える程しかないけど、それでも、あの子の優しさを知
るには充分だったよ。多分、"あたし"達を救うには、余りにも優しすぎたんだ。憎し
みよりも哀れみの方が強くなってしまって、"あたし"達を殺す事ができなくなった
――そういう子だよ、悟飯は」
『あいつらは、哀れな存在なんだ』
そう言っていた師。
「どうしてあの子が全てを背負わなくちゃならなかったのか・・・運命ってのは、皮
肉なモノだね」
――そう。そうなんだ。俺は、いつだって悟飯さんの背中を見ているしかなかった
んだ。いつも、結局は悟飯さんに頼ってばかりで――・・・。
「でも、あんたの時代では、ちゃんとあんた自身でケリをつけられたんだろう?」
「え・・・?」
「あたし達を遥かに上回る力を手に入れたあんたがもう1度わざわざこの時代へ来る
なんて、理由は1つじゃないか。違う?」
トランクスは言葉に詰まった。
何と答えていいのか分からない。
「・・・すまない、変な事聞いちゃったね。引き止めて悪かったよ。早く他の皆にも
会いに行ってあげな」
椅子から立ち上がり、18号は少し慌てたように口調を変える。
「あんたもタイミングいい時に来たね。今日は丁度皆ここに集まってるよ。――"あ
んた"のバースデー・パーティーなんだ。もう1人の主役も顔を見せたら喜ぶよ」
「そうか、"今日"は誕生日か・・・。すっかり忘れてたな」
後に続いて立ち上がったトランクスが中へ向かおうとした、その時。
トランクスの視界にスッと細い両腕が入ってきた。
眩しい程のプラチナブロンドがフワリと視界に広がる。
「――!!」
抱きつかれたのだと理解するのに、数瞬を要した。
そのあまりに華奢な体つきは、あれほどの力を全く感じさせないものだった。
彼女から伝わってくる温かさは、決して人工的なものではなく、確かに"人間"のそ
れだった。
「これだけは言っておきたいんだ。――・・・ありがとう・・・。あんたがこの時代
に来なかったら、あたし達は救われなかった。自ら堕ちていた。あたしは・・・手を
差し伸べてくれる存在をこの手で消してしまう所だった。あんたが来てくれたおかげ
で、あたし達は"人間"のままでいる事ができたんだ。もう1人のあたし達だって、あ
んたが救ってくれた――」
"ありがとう"
思いがけないその言葉に、トランクスの中で何かが堰を切って溢れ出した。
――ここへ来る時に感じていた、あの奇妙な感触の正体がやっと分かったような気
がする。
彼らを倒したあの日、トランクスの気は晴れなかった。
ズシリと何かが重くのしかかってくるようだった。
それが今の今まで心の奥底に残っていたのだ。
――あれほど倒す事を望んでいたと言うのに、あれほど憎い存在だったはずなの
に、俺は・・・迷っていたんだ。本当にあれが正しい判断だったのかどうか。
死と言う形でしか救われる術がなかった彼ら。
冷酷さの裏側にどうしようもない絶望感を秘めていた彼ら。
必死に救いを求めていた彼ら――。
「俺は、あいつらを本当に救ってやれたんだろうか。・・・解放してやれたんだろう
か」
「そう思ってくれるだけで、充分だよ・・・。上手く言えないけど・・・何だろう・
・・ただ、気分が変に楽で――・・・きっと、もう1人のあたしも同じだと思えるん
だ。だから――トランクス、あんたも、ね・・・」
そう言って18号はトランクスの背を軽く叩き、絡めていた腕を離した。
そして、まるでいたずらを思いついた子供のような笑みを浮かべる。
「あたしの"家族"が誰だか知ったら、あんたきっと腰抜かすだろうね」
その無邪気とすら言える笑みに、トランクスは心底運命の皮肉さに驚きを隠しえな
かった。
2つの異なる時間(とき)の流れの中で同じ存在が全く違う道を歩む――・・・。
その様を目にしたトランクスは、母が言わんとしていた事を理解した。
『確かに私達が今存在しているこの時代の過去はもう変える事はできないわ。だけ
どねトランクス、あんたは違った"未来"を見たいとは思わない? どの時代でも人造
人間達にやられっぱなしじゃシャクじゃない? 1つくらい、人造人間達を倒して平
和になった"未来"があったっていいとは思わない?』
何者にも過去を変える事はできない。
定められた運命から逃れる事はできない。
だが、選ぶ事はできるのだ。
運命は1つではない。
未来は1つではない。
目には見えなくても、運命は確かに無限に存在し、それを選び取るのは自分自身な
のだ。
どの運命を選ぶのかを決めるのは自分自身であり、些細なきっかけで選ぶ運命を変
える事もできるものなのだ。
未来を切り開くのは、自分自身――・・・。
The future is not set.――未来は、決まってなどいない――
終
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
☆ 後書き ☆
"小説に関しては心残りない"とか「Memento
Mori 〜汝、死を忘るるなかれ〜」の
後書きで書いときながらしっかりまた小説書いてる私って・・・しかも連載になって
るし(苦笑) ホントに人造人間達とトランクスの話は書き易いと言うか・・・。こ
の小説を書いたきっかけも、「未来トランクスが18号とクリリンの事知ったら複雑
だろうなぁ」という何気ない事だったんですが、気が付いたらパソに向かって書き始
めてました(笑) しかしまさかこれほどまでに長くなるとは・・・。ホントは今ま
で通り1話完結にするつもりだったんですけど、結局3話に及んでしまいました(苦
笑)
この話には私のしょーもないこだわりと趣味が入りまくってますね。まず冒頭で出
てきた"時間(とき)の神"=クロノス。クロノスって名前の響きも良いし、結構好き
だったりするので出してみました(名前は出てないけど(笑)) マーロンも私のこ
だわりで登場させたんですよね。劇場版を見る限り、未来トランクスが報告に来た時
はマーロンは3、4歳どころかクリリンと18号がまだ結婚すらしてないハズなんで
すけど、マーロンがいないとどーしてもトランクスと18号が会うタイミングが作れ
なくて(苦笑) 勝手に設定少しいじっちゃいました。後はラストの"The
future is
not set."。これ、「T2」でカイルが言ってたセリフで「T2」のDVDで隠しコンテ
ンツを見る為のキーワードにもなってます(笑) 『未来は決まっていない』、この
セリフいいですよねぇ♪ まさに未来トランクス達にピッタリな言葉だと思います。
で、ふと全体を見直してみると結局トランクスと18号の会話のみで終わっちゃて
るんですけど(汗) トランクス、18号とクリリンが結婚した事まだ知らないじゃ
ん!(まぁ、この後知らされてきっと、トランクスがベジータとブルマの息子だと
知った時の悟空より驚きのリアクション見せたのはまず間違いないでしょうけど(笑))
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
前へ